様への提出作品
スイカ割り、してみない?
 先生から宿題を渡され、クソ長い校長先生の話も聞き、
明日から夏休みという事でのんびりと過ごそうとした俺にあいつは、いきなりその言葉をぶつけてきた。

「は?」
「だーかーらっ!!スイカ割りよ、スイカ割りい!よく漫画とかに出てくるアレ。一緒にやってみようよ!」
「嫌だね。」
「へっ?…な、なんでよ。」
「親に食べ物を粗末にするなって習わなかったのか?」
「別に…自分の所有物を好きに使おうが勝手でしょ。あんたが買うわけでもないのに。」
「まっまあそれは置いといて、何で!スイカ割りなんだよ。」
「一回やってみたかったからよ。あんただってそう思うでしょ?」
「まあ…分かる気がする…けど…そ「じゃあ決定ね!」
「は?」
「明日の朝7時に、私の家に集合!」
「ああ、そうだ。俺の他に誰かいるのか?」
「別に…いないけど?」
「じゃあ、集合って意味、間違えてないか?」
「うっ…うるさい!ともかく集合よ!じゃあね!!!!」

アイツはそう叫んで走っていってしまった。

「…なんなんだ……一体…。」

 俺は、人前で主張する事ができないが、一応あいつの事が好きだ。
我儘で、短気で、馬鹿で、自己主張が激しい。
…と、短所ばかりのあいつだが、そこが可愛いというようなもんだ。
って俺は親バカか!!

そんな風に俺は妄想したりツッコミしたりして明日を待った。

ピンポーン
 俺はチャイムを鳴らし、ブツブツと小声で文句を言いながらあいつが出てくるのを待った。
「おまたせっ!」
息をきらして向かってきたあいつの笑顔が可愛くて、文句とか暑さが吹き飛ばされた。
「さあ、早速スイカ割りよ!!」
そうあいつが自身満々にスイカをかつぎだした。
「お、重くないのか・・・?」
俺はそう驚くことしかできなかった。

 スイカ割りをする場所は、近くの川だ。
あそこは意外と人気があるから、俺らは人々に自慢することができるだろう。
俺等はすっと荷物をおろした。

「目隠しOK?」
「目隠しOK。」
「棒もある?」
「棒もある。」
「じゃあ、レジャーシートは?」
「ここに敷いているだろ。」
「じゃ、じゃあスイカは?」
「ここに置いてあるだろ!!」
「わ、分かったわよ。じゃあ早速、割るしかないわね。」
「ああ。」

 スイカは一つしかなかった。
・・・という事で、スイカを割るのはもちろんあいつになった。

「いくわよっ!」
「ああ、もうどんとこい。」
「ふぬ〜・・・〜ぬぬ・・・。」
あいつは、スイカがある場所と正反対の方向へ進んでいった。どうやら、あいつは方向音痴なようだ。
「おーい、そっちにはスイカなどないぞー!」
「分かってるわよ!」
「あっそ!」
あいつがスイカを叩くまでに、30分もかかった。

「美味しいわね。」
「叩く時間が長かったぶんな。」
「なっ!もう少し優しい言葉の一つくらいかけなさいよ!!」
「ええ、・・・例えば?」
「そうだね。とか、君の方がよっぽど美味しそうだよ。とか・・・。」
「ぷっ。何だそれ。」
「例えばよ、た・と・え・ば!!」
「ふうん。じゃあ、俺もそんな言葉の一つを言ってみようじゃないか。」
「うんうん、言ってみなさいよ。」
「そうだな、・・・お前ほど、」 「うん。」
「・・・お前ほど!!!」
「なっ何よ!!」
「まあ、そう慌てさせるなよ。」
「わ、分かったわよ。」
「・・・ごほんっ。いいか、お前ほど・・・。」
「うん・・・。」

「お前ほど生意気な奴はいない!!!!」

「・・・はあ!?」
「まあ、そういう事だ。」
「何よそれ、褒め言葉にもなってないじゃないの。」
「まっ、お前には一生分からないでいいさ。もう、この事は忘れろ。」
「はあ!?ふざけないでよ!……!……。」

 危ない危ない。可愛いといってしまうところだった・・・。
まあ、そう言ってもいいようなムードだったが、俺はそんなキャラじゃない。
だが…奴の事だ、来年も懲りずにまた言ってくるだろう。

「スイカ割り、してみない?」

―…なんてな。

そしたら、次こそは可愛いって言ってやってもいいかな?




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